2008年6月13日金曜日

オニオンリング

 会社の駐車場にあるピクニックテーブルで昼食を取っている同僚の隣に座り、私を迎えに来るはずの夫を待つことにした。真っ黒い雲が見えるのに太陽の光が強く、ムシムシする天気だった。同じ部署の同僚二人は、それぞれ自宅から持ってきたお弁当を食べていた。と言っても、ドイツ人のアンのお弁当はいつも、Lean Cuisine という、ほんの僅かな分量しか入っていないダイエットメニューの冷凍食品だ。彼女がいつもLean Cuisineを会社の冷蔵庫に保存しているのは、有名な話である。

 しばらくすると、夫がバイクと共に登場した。私のヘルメットもしっかり持参している。会社の同僚達の前で、夫のバイクの後ろに乗るのは、なんだか見せびらかしているようで恥ずかしかったが、「まあ、いいか」と思い直し、ヘルメットを被り、バイクに飛び乗った。

 「どこに行くの?」と聞けば、「ソニック」と夫は言う。ソニックは、私の会社の近くにある「ドライブイン・レストラン」で、駐車場にある注文用のスピーカーに向かって声を張り上げると、後で店員が車まで注文した食事を運んできてくれる。ローラースケートを履いた若い店員が持って来ることもあるが、ここではスニーカー履きの中年女性が、ドリンクと茶色の袋に入ったハンバーガーを持って来た。つまり、彼女達はウエイトレスである。普通は駐車した車の中で食べるのだが、私たちはバイクで来ていたので、店の前にあるテーブルで食べることにした。

 注文したオニオンリングとダイエットコーラをテーブルの上に置き、抱えていた鞄の中から、オフィスで食べる予定だったサンドイッチを取り出す。オニオンリングは、想像以上に大きかった。しっかり厚切りの玉ねぎが、揚げたての味付き衣に包まれている。私たちがよく行くバーガーキングのオニオンリングは、玉ねぎがもっと薄く、どちらかと言えば「バター」と呼ばれる衣を食べるという感があるが、ソニックのオニオンリングは、しっかり玉ねぎの存在感がある。紙袋の上に絞り出した携帯用ケチャップをつけながら、このオニオンリングを、夫と一緒に食べた。油を含んだ揚げたての玉ねぎは、プリプリした歯触りで甘い。バターの香ばしさと玉ねぎの食感が、家から持参したキャットフィッシュ入りサンドイッチに良く合った。イギリスの「フィッシュ&チップス」も、きっとこんな感じなのではないかと思った。それならイギリス人が「フィッシュ&チップス」を自慢したがるのも分かる気がする。

 外は生憎、曇り空である。車が走り抜ける目抜き通りを見ながら、サンドイッチを食べていた私の腕に、一粒雨が当たった。
「雨が降るかもしれないね。」
「早く切り上げよう。さもないと、会社の女の子達に、ずぶ濡れの姿を笑われることになるよ。」
こうして、オニオンリングを大急ぎで口に放り込み、私たちはまたバイクに乗った。

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