2008年9月20日土曜日

コンビニの春巻き

 日本のコンビニで、コロッケや肉まんが、レジ近くに売られているのと同様、アメリカのガソリンスタンドのコンビニには、春巻きがよく売られている。ガソリンを入れた帰り道、小腹が空く時間帯についつい買ってしまう、ちょっとしたおやつだ。キャベツと挽肉が揚げた皮に包まれた春巻きは、香ばしい匂いを放ちながら、温められたガラスケースの中で、ライトを浴びて客を待っている。あの姿を見ると、どうしても買わずにはいられない。値段も1ドルくらいで、手頃なのが良い。消費者の心をうまく捉えた商売戦略だと思う。

マカロニ&チーズ

 アメリカ人が大好きな料理に、「マカロニ&チーズ」というのがある。日本でもおなじみの「マカロニ」に、バター、チーズ、牛乳を混ぜ、上にパン粉を載せて、オーブンで焼いた物であるが、私のお気に入りのイタリア料理番組「Everyday Italian」でも紹介していたので、元々はイタリア料理なのかもしれない。このパスタ料理を、アメリカ人はこよなく愛する。アメリカではどこのスーパーでも、小さな箱に入った「マカロニ&チーズ」のパッケージが売られている。

 今朝、このアメリカのインスタント版「マカロニ&チーズ」を、夫と私のお弁当用に作った。2年以上「ターキーサンドイッチ」を毎日会社に持参し続けた夫は、ある日「一揆」を起こした。「これ以上ターキーサンドイッチは食べたくない」と、サンドイッチ持参ストライキを始めたのである。朝、時間のない中作ったサンドイッチが冷蔵庫に残っているのを見た私は(日本の感覚で言えば、おにぎりを毎日持参させていたようなものである)、これになんとか対応しなければならないと思った。そこで登場するのが、この「マカロニ&チーズ」である。なにしろ、作り方が簡単で、時間がかからないのが良い。お湯を沸騰させ、小さな紙製の箱に直接入ったマカロニを、サーッと入れる。きっちり7分間茹で水切りした後、鍋に戻しマーガリンを加える。マーガリンが溶けるまでマカロニをかき回し、箱の中にあった粉末のチーズと少量の牛乳を加え、かき混ぜたら出来上がりだ。日本のインスタントラーメンを作る感覚と、大変似ている。しかし、このままではあまりにも芸がないので、私は大抵、野菜やシーチキンなど、色々な具を加える。夫が好きな具が、シーチキンとグリンピースで、これはマカロニ&チーズの箱にレシピが書いてあったそうだ。私はこの他に、コーン、インゲン、ハム等、冷蔵庫にある残り物や冷凍食品を適当に入れる。パルメザンチーズがあれば、それもふりかける。チーズを入れると、更にコクのあるおいしさになるからだ。今日は偶然目についた「イタリアンハーブ」と胡椒をかけてみた。ハーブの香りが、インスタントフードを本格派料理に変身させてくれた。こうして一手間かければ、素がチープでも、豪華に飾ることができるのだ。「マカロニ&チーズ」は、忙しい主婦の強い見方である。

2008年7月19日土曜日

サブウェイ

 もうそろそろ、夫に電話をしようかと思っていた頃、内線電話から臨時で受付をしているサダージオの声がした。
「2番に電話です。」
若くて元気のいい声は、普段電話を取る受付秘書よりも感じがいい。
「ありがとう。」
彼に礼を言い、すぐに外線電話の2番を押す。電話口から予想通り、夫の声が聞こえてきた。
「もう、会社まで来てるんだ。」
その言葉に、私はあわてて昼食に出かける準備をする。駐車場に出ると、既に私の部署では誰もが知っている、バイクに乗った夫の姿があった。

 昨日夫とのランチデートが成立せず、一人でタコスを食べた私は、同じファーストフードでも少し違ったサブウェイのサンドイッチが食べたいと思った。中に挟む野菜を自分で選べるサブウェイは、私のお気に入りのサンドイッチ屋である。サブウェイの売り文句は、他のファーストフードよりもカロリーが低いということだ。体重を落とすのを競い合う人気のリアリティーショー「Biggest Loser」と契約をしているらしく、番組にはよくサブウェイに行くシーンが出てくる。ヘルシーなイメージは、これからのアメリカ社会で重要になってくるだろう。

 店の前には「1フィートパンで5ドル」とのポスターがあった。1フィートといえば、30センチくらいである。二人で分けるのに丁度いい大きさかもしれないと思い、夫と半分ずつ食べることにした。1つ5ドルでも、サンドイッチを2つ注文するより安くつく。カウンターにサンドイッチの具を選ぶための写真があった。どれもおいしそうに見えるが、実を言うと「ミートボール」を作るテレビ番組を前日見たばかりで、オフィスにいた時から、ずいぶん昔に食べたサブウェイの「ミートボールサンドイッチ」を食べたいと思っていたのだった。そしてこのミートボールサンドイッチが、写真の中にある。私が口を開こうとした時、夫が「ミートボールにする?」と先手を打った。私たち夫婦も、なかなか以心伝心できるようになってきたのかもしれない。

 イタリアンブレッドの中央に切れ目を入れ、オーブンで温めてもらう。そしてパンの上に、トマトソース味のミートボールをたっぷり載せ、夫の好物のアメリカンチーズとレタス、オリーブ、ピーマンを追加してもらった。
「オリーブは多めに入れてね。」
と、夫は注文するのを怠らない。サブウェイには、大きな手作りのクッキーが売られている。ショーケースに入っているたくさんの種類から、M&Mチョコレート入りのクッキーを3枚注文した。ドリンクと小さな袋入りのポテトチップスも込みで8ドル50セントくらいだった。

 トレーをテーブルに運び、やっと人心地つく。サンドイッチの包みを開けると、半分に切ってもらったはずのパンの大きさに、ずいぶん違いがあった。一つはずいぶん大きく、もう一つはかなり小さめなのである。私と夫の身長の違いを考慮してか、それともただ単に、店員が均等にパンを切ることができないのかは分からないが、やはり夫に大きい方をあげるべきだろうと思い、小さい方を自分用として紙ナプキンに包んだ。

 ミートボールを食べるのは、久しぶりだ。大きな柔らかい肉の塊が、トマトソースに良く合う。ミートボールにオリーブを入れるのは初めてだったが、こちらの相性も良いと思った。私たちが今回選んだ具は全て、イタリア料理でよく使われるので、相性もいいのかもしれない。日本人にとってアメリカ料理といえば、ハンバーガーくらいしか思い浮かばないかもしれないが、イタリア料理などは既に食生活の中に深く浸透し、アメリカで食べられる普通の料理と言って差し支えない。実際、テレビに出演するセレブシェフの中には、イタリア系アメリカ人が多く、彼らが作る料理を、特別な海外の料理とは思わない。私たちが中華料理であるラーメンや餃子を、ほとんど日本食の感覚で食べるようなものである。だから私は、「アメリカの料理はまずい」とか、アメリカ人の食生活を馬鹿にするような日本人の発言が好きではない。日本人の食生活とは違うからといって、他国の食文化を否定する傲慢さは、島国根性の表れではないだろうか。

 その週末に行われる「ガレージセール」について、夫と話し合う。ガレージセールとは、家の前やガレージに各家庭で要らなくなった品物を売るというものであるが、私たちが住んでいる地区では、毎年6月、コミュニティーの恒例行事として、ガレージセールを行う。この週末は近所のあちらこちらで、古い家具や服などを広げて、町全体が即席の市場と変る。私たちが今の家に引っ越した最初の年は、物珍しく、夫と二人で近所一帯を散策に出かけたものだ。夫はこの年、どこかの家庭で使われなくなったビデオプレーヤーを20ドルくらいで購入した。初めは、このガレージセールを見に行きたいと話し合っていたのだが、途中から「私たちも今年はガレージセールをやってみよう」と内容が変ってきた。丁度使っていない乾燥機と洗濯機を売りたいと、先日話し合っていたばかりだったからだ。私も夫も、今までガレージセールをしたことがない。初めてのことに挑戦するのは、ずいぶん楽しそうだ。こんな話をし、また夫のバイクに乗って、オフィスまで戻った。

 

 

2008年6月28日土曜日

フランネルケーキ

 私が初めて「フランネルケーキ」なるものを食べたのは、夫と一緒に地元の遊園地に行った時のことだった。屋台を見つけた夫が、「遊園地でしか食べられない物を、食べさせてあげる」と言って、なにやら紙皿に載った茶色い物体を運んでくる。
「これはフランネルケーキというんだよ。アメリカ人は、これが大好きなのさ。」
と、またまた子供のようなはしゃぎようである。たぶん、ホットケーキのドウのようなものを絞り出して丸く型取り、それを油で揚げたのであろう。アメリカの素朴なドーナツのような味がした。

 このフランネルケーキは、例えば私たち日本人が、綿菓子で夏祭りを思い浮かべるように、アメリカでは遊園地の代名詞のようで、子供の頃の思い出など、ずいぶんとセンチメンタルなイメージを醸し出すようだ。先日見た「遊園地の食事」というテレビ番組でも、このフランネルケーキが登場していた。確かに、普通の町中では、あまりお目見えしない。サンフランシスコのピア39に行った時、閉店間際の売店で、夫がまたしても注文したのを食べたのが、私にとっての第2回目であった。ピア39は、サンフランシスコの有名な観光地で、売店の前には大きなメリーゴーランドがあったから、これも遊園地の一つに数えていいのかもしれない。やはり、フランネルケーキは、遊園地で食べるお菓子なのだ。その特定された環境が、郷愁にも近い思い入れを引き出すのだろう。私の中でも、あの揚げたての温かい感覚が、暑い夏、赤く日に焼けた肌と、家族連れで賑わう遊園地の木陰で休んだ思い出と共に蘇ってくる。

2008年6月20日金曜日

タコベル

 今日は珍しく、一人で会社の近くにあるファーストフードレストラン「タコベル」に行った。タコベルは、メキシコ料理の代表「タコス」を中心に販売する、アメリカにはどこにでもあるファーストフードレストランだ。もちろん、本物のメキシコのタコスとは、きっと違うのだろうが、これはこれで大変おいしい。本当は夫と一緒に行きたかったのだが、正午過ぎに電話したところ、「眠い」の一言で、今日のランチデートは成立しなかった。会社の外に出ると、先週と同じく同僚たちが、駐車場のピクニックテーブルで食事をしている。彼女たちは毎週木曜日、一緒にランチを外で取る約束でもしているのだろうか。
「また、ランチデート?」
と、同僚の一人が私をからかう。
「ノー。今日は、私だけ。彼はまだ寝てるわ。」
私は、軽やかに答えた。

 店のドアを開けると、急に冷たい空気が肌を刺す。ここの店はいつも、クーラーが効き過ぎている。予想していたことなので、持参していた上着を羽織った。
「何になさいますか?」
しばらく迷った後、「クランチーラップスプリーム」と「タコス」とドリンクがセットになったコンボを注文した。巨大なドリンク用カップをレジ係から受け取り、注文した食事の出来上がりを待つ間、カウンター横にあるドリンク給水機から、ダイエットペプシを注ぐ。アメリカのファーストフードレストランでは、ドリンクを自分で注ぐことができて、何杯でもお代わりオーケーだ。大抵の人は食事をした後、ドリンクを注ぎ足してから、レストランを去る。

 私のトレーを受け取ってから、窓際の一番隅の席に座った。クランチーラップスプリームの包みを開けて、中から八角形に折られたトルティーラを引っ張り出す。小麦粉で作られたクレープのように薄いトルティーラの中に、タコスソース味の牛ひき肉とスライスされたれたレタスが、スパイシーな液状チーズと、サワークリームをベースにしたソースに混ざり合っている。この具を包んでいるラップには、柔らかいトルティーラに歯応えを加えるためか、「ハードシェル」と呼ばれるとうもろこし粉で作られたタコスの「受け皿」にあたる物が、重ねられている。小麦粉のトルティーラと、とうもろこし粉のハードシェルは、噛み応えといい、味といい、抜群のコンビネーションだ。このラップに、ヨーグルトのようなサワークリームのまろやかさと、温かくスパイシーなチーズが良く合う。この商品開発に携わった人は、ファーストフードをこよなく愛するアメリカ人の食嗜好を良く理解した人だと思う。

 顔の大きさ程もあるクランチーラップスプリームを、私は端からほぐほぐと食べ出した。途中、サワークリームや液状チーズが、とろりと溢れ出すことがある。ナプキンで何度も口元を拭きながら、小さく、なるべく上品に食べるよう努力した。ふと周りを見渡すと、近くの銀行に勤めている人達だろうか、身分証明のカードを首からぶら下げている会社勤め風の人が多い。こういう場所に来ると、自分も会社勤めをしているんだなと思う。翻訳という仕事柄、自分一人で黙々とコンピュータに向かうことが多い私は、自分をOLだとは思わない。事務職でなければOLと呼ばないのかもしれないが、毎日会社のオフィスで仕事をしている以上、会社勤めであることには違いない。見知らぬサラリーマン達を見ることは、自分の立場を違った目で見られる良い機会であると思った。職場を抜け出して昼食を取る人々は、プライベートな空間に居ながらも、働く者の顔をしている。私はこういった空気が好きだ。サラリーマン姿でファーストフードのタコスを食べる。なかなか、現代的アメリカである。

 私が思うに、タコスを馬鹿にすることは、日本文化である寿司やおにぎりを冒涜するようなものである。ファーストフードといえども、タコスには色々な種類があり、野菜もそれなりに入っている。肉が主流になっているハンバーガーとはかなり違い、味も軽いものが多い。タコベルの良い点は、値段がハンバーガーより安いことだ。私が今日注文したコンボは、クランチーラップスプリーム、タコスとドリンクで、4ドル以下だった。今時、4ドル以下でハンバーガーをセットで食べることはできない。

 セットでくっ付いてきたタコスを家で食べることにし、私は長居することなく席を立った。使ったナプキンをゴミ箱に捨て、ドリンク用カップをダイエットペプシでいっぱいに満たし、明るい日差しが眩しい大通りに向かった。さて、午後の仕事が待っている。私も働く者の顔を取り戻し、現実の世界に戻っていった。

2008年6月16日月曜日

ケトルポップコーン

 アメリカ第一の大衆娯楽と言えば、映画である。映画を見るのは、なにも映画館だけではない。私の夫は、「ブロックバスター」というビデオ屋の宅配システムの会員で、月々17ドルの使用料で一度に最高3つの映画が自宅に郵送される。見終わったら近くのブロックバスターに行き、お店のDVDと交換するか、切手無用の返信用封筒で郵送すれば、インターネットで予約しておいた映画が次々と送られる。だから我が家には、映画のDVDが常にある。たぶん私たちが見る映画の数は、アメリカ国民の平均をかなり上回っているであろう。映画評論家にも負けないほど、有名な映画ならほとんど見ている。

 この自宅での「ムービーナイト」に欠かせないのが、ポップコーンだ。アメリカ人はなぜか、映画を見る時必ずポップコーンを食べる。とうもろこしはアメリカ原産だから、ポップコーンの消費量もアメリカでは多いのだろうか。世界で初めてポップコーンを食べた人は、ネイティブアメリカンだったと、どこかで読んだことがある。

 ポップコーンにも色々な種類がある。その中で私たち夫婦が一番気に入っているのが、「ケトルポップコーン」である。作り方が一般のポップコーンと違うのかどうかは良く分からないが、確かに味が違う。甘いのである。甘いと言っても、キャラメルのような人工的な甘さではなく、とうもろこし本来の香りがする甘さなのである。そしてどこかに「塩」も感じる。スイカに塩をつけると甘さが引き立つのと同じように、この微妙な塩加減がおいしさの秘訣なのかもしれない。ちなみに「ケトル」とは、「釜」とか「やかん」といった意味である。とすると、釜を使って製造してあるのだろうか。

 ファーマーズマーケットで、このケトルポップコーンを売っているのを見たことがある。とうもろこしの甘い香りが、なんとも言えず良いのである。しかし庶民派の私は、電子レンジで加熱するだけでできてしまうパッケージに入っている物を、いつも食べている。キッチンの棚からプラスチックの袋に包まれた紙製のパッケージを取り出し、電子レンジに入れる。我が家の電子レンジには「ポップコーン用」というボタンがあり、それを押すと完璧に仕上がったポップコーンが出来上がる。昨夜バスルームにいた私は、キッチンの棚を空ける音を聞いただけで、夫がポップコーンを作りだしたのが分かった。ほとんど野生化した妻としての私の直感は、かなり的確に夫の行動を読むことができる。

 私たち夫婦は、よくミュージカルのように歌を歌いながら会話をする。普段の会話に節を付けているだけなのだが、まあ周りから見れば、ばかげて見えるかもしれない。しかし、他人がどう思おうが、私たち本人は、それで幸せなのである。ある日、ケトルポップコーンを作っている夫に向かって、私は「ケトルポップコーンが食べられる喜び」を表すため、以下のような歌を歌いだした。

Yummy-yummy popcorn
Yummy-yummy popcorn
Yummy-yummy popcorn
Yummy-Yummy

音楽家でない私は、この歌を楽譜に表わすことはできないが、とにかく上のような歌詞を節をつけて歌ったのである。ちなみに"yummy"とは、「おいしい」ということ。この日から、「ケトルポップコーン」は我が家では、「ヤミヤミ・ポップコーン」と呼ばれるようになった。

2008年6月13日金曜日

オニオンリング

 会社の駐車場にあるピクニックテーブルで昼食を取っている同僚の隣に座り、私を迎えに来るはずの夫を待つことにした。真っ黒い雲が見えるのに太陽の光が強く、ムシムシする天気だった。同じ部署の同僚二人は、それぞれ自宅から持ってきたお弁当を食べていた。と言っても、ドイツ人のアンのお弁当はいつも、Lean Cuisine という、ほんの僅かな分量しか入っていないダイエットメニューの冷凍食品だ。彼女がいつもLean Cuisineを会社の冷蔵庫に保存しているのは、有名な話である。

 しばらくすると、夫がバイクと共に登場した。私のヘルメットもしっかり持参している。会社の同僚達の前で、夫のバイクの後ろに乗るのは、なんだか見せびらかしているようで恥ずかしかったが、「まあ、いいか」と思い直し、ヘルメットを被り、バイクに飛び乗った。

 「どこに行くの?」と聞けば、「ソニック」と夫は言う。ソニックは、私の会社の近くにある「ドライブイン・レストラン」で、駐車場にある注文用のスピーカーに向かって声を張り上げると、後で店員が車まで注文した食事を運んできてくれる。ローラースケートを履いた若い店員が持って来ることもあるが、ここではスニーカー履きの中年女性が、ドリンクと茶色の袋に入ったハンバーガーを持って来た。つまり、彼女達はウエイトレスである。普通は駐車した車の中で食べるのだが、私たちはバイクで来ていたので、店の前にあるテーブルで食べることにした。

 注文したオニオンリングとダイエットコーラをテーブルの上に置き、抱えていた鞄の中から、オフィスで食べる予定だったサンドイッチを取り出す。オニオンリングは、想像以上に大きかった。しっかり厚切りの玉ねぎが、揚げたての味付き衣に包まれている。私たちがよく行くバーガーキングのオニオンリングは、玉ねぎがもっと薄く、どちらかと言えば「バター」と呼ばれる衣を食べるという感があるが、ソニックのオニオンリングは、しっかり玉ねぎの存在感がある。紙袋の上に絞り出した携帯用ケチャップをつけながら、このオニオンリングを、夫と一緒に食べた。油を含んだ揚げたての玉ねぎは、プリプリした歯触りで甘い。バターの香ばしさと玉ねぎの食感が、家から持参したキャットフィッシュ入りサンドイッチに良く合った。イギリスの「フィッシュ&チップス」も、きっとこんな感じなのではないかと思った。それならイギリス人が「フィッシュ&チップス」を自慢したがるのも分かる気がする。

 外は生憎、曇り空である。車が走り抜ける目抜き通りを見ながら、サンドイッチを食べていた私の腕に、一粒雨が当たった。
「雨が降るかもしれないね。」
「早く切り上げよう。さもないと、会社の女の子達に、ずぶ濡れの姿を笑われることになるよ。」
こうして、オニオンリングを大急ぎで口に放り込み、私たちはまたバイクに乗った。