2008年6月16日月曜日

ケトルポップコーン

 アメリカ第一の大衆娯楽と言えば、映画である。映画を見るのは、なにも映画館だけではない。私の夫は、「ブロックバスター」というビデオ屋の宅配システムの会員で、月々17ドルの使用料で一度に最高3つの映画が自宅に郵送される。見終わったら近くのブロックバスターに行き、お店のDVDと交換するか、切手無用の返信用封筒で郵送すれば、インターネットで予約しておいた映画が次々と送られる。だから我が家には、映画のDVDが常にある。たぶん私たちが見る映画の数は、アメリカ国民の平均をかなり上回っているであろう。映画評論家にも負けないほど、有名な映画ならほとんど見ている。

 この自宅での「ムービーナイト」に欠かせないのが、ポップコーンだ。アメリカ人はなぜか、映画を見る時必ずポップコーンを食べる。とうもろこしはアメリカ原産だから、ポップコーンの消費量もアメリカでは多いのだろうか。世界で初めてポップコーンを食べた人は、ネイティブアメリカンだったと、どこかで読んだことがある。

 ポップコーンにも色々な種類がある。その中で私たち夫婦が一番気に入っているのが、「ケトルポップコーン」である。作り方が一般のポップコーンと違うのかどうかは良く分からないが、確かに味が違う。甘いのである。甘いと言っても、キャラメルのような人工的な甘さではなく、とうもろこし本来の香りがする甘さなのである。そしてどこかに「塩」も感じる。スイカに塩をつけると甘さが引き立つのと同じように、この微妙な塩加減がおいしさの秘訣なのかもしれない。ちなみに「ケトル」とは、「釜」とか「やかん」といった意味である。とすると、釜を使って製造してあるのだろうか。

 ファーマーズマーケットで、このケトルポップコーンを売っているのを見たことがある。とうもろこしの甘い香りが、なんとも言えず良いのである。しかし庶民派の私は、電子レンジで加熱するだけでできてしまうパッケージに入っている物を、いつも食べている。キッチンの棚からプラスチックの袋に包まれた紙製のパッケージを取り出し、電子レンジに入れる。我が家の電子レンジには「ポップコーン用」というボタンがあり、それを押すと完璧に仕上がったポップコーンが出来上がる。昨夜バスルームにいた私は、キッチンの棚を空ける音を聞いただけで、夫がポップコーンを作りだしたのが分かった。ほとんど野生化した妻としての私の直感は、かなり的確に夫の行動を読むことができる。

 私たち夫婦は、よくミュージカルのように歌を歌いながら会話をする。普段の会話に節を付けているだけなのだが、まあ周りから見れば、ばかげて見えるかもしれない。しかし、他人がどう思おうが、私たち本人は、それで幸せなのである。ある日、ケトルポップコーンを作っている夫に向かって、私は「ケトルポップコーンが食べられる喜び」を表すため、以下のような歌を歌いだした。

Yummy-yummy popcorn
Yummy-yummy popcorn
Yummy-yummy popcorn
Yummy-Yummy

音楽家でない私は、この歌を楽譜に表わすことはできないが、とにかく上のような歌詞を節をつけて歌ったのである。ちなみに"yummy"とは、「おいしい」ということ。この日から、「ケトルポップコーン」は我が家では、「ヤミヤミ・ポップコーン」と呼ばれるようになった。

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